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TRANSITION PROCESS

トランジションプロセスについて、一緒に学びましょう。

準備期  赴任辞令後~着任するまでの期間

準備期  赴任辞令後~着任するまでの期間

- トランジションの難易度を測るケイパビリティギャップテスト

「あなたのトランジション難易度は?~海外駐在編~」

 

新しい土地で働き始めることは、どのような人にとっても、何かしらの変化を伴うものあり、多少なりともチャレンジが求められます。

そして、そこには「ケイパビリティ・ギャップ」(期待される役割と実際の能力の差異)が存在します。「ケイパビリティ・ギャップ」が大きければ大きいほど、グローバルリーダーになるプロセスの難易度は高く、何らかの支援が必要と言えます。

あなたにとっての「ケイパビリティ・ギャップ」は、どの程度の大きさと言えそうでしょうか。
私のコーチとしての経験から、次のような視点で、一人ひとりの「ケイパビリティ・ギャップ」度合いを予測できるのではと考えています。ひとつの参考に、チェックしてみていただければと思います。​

これまでに、国内も含めて、転勤・転校など地域を越えて移住した経験はありますか?

これまでに、留学等も含めて海外での長期滞在経験(1年以上) はありますか?

赴任先に人的ネットワーク(公私ともに) を持っていますか?

現地の言語は、日常会話レベルで話せますか?

海外で担うポジションは、現ポジションに比較して、2ランク以上アップしませんか?

(家族を帯同させる場合) 家族には、海外長期滞在経験(1年以上) はありますか?

今回の赴任の辞令を受けたときに、ポジティブな心理的反応(喜び、わくわく、やりがい等) がありましたか?

これらの問いに対して、Yesの数が少ないほど、海外赴任時の「ケイパビリティ・ギャップ」は大きくなるようです。

​Yesの数が少ない方ほど、「ギャップ」を埋めていくための、何かしらの支援策を用意する必要があると言えます。

準備期

Preparation

ユーフォリア期  赴任後すぐ~2ヶ月ほど

- 100日間、違和感をメモしよう

 

ユーフォリア期間としての最初の1~2か月間は、新鮮な目で自分の職場を観察することのできる貴重な時間でもあります。その環境にすっかり馴染んでしまっては捉えにくくなるその職場の特徴を捉えることができます。それはその職場の文化です。

文化とは、「金魚が入っている水槽の水のようなものである(エリン・メイヤー氏)」と表現されます。つまりは内側に入ってしまったら、自覚できなくなってしまうものなのです。リーダーの重要な役割のひとつが、職場の「文化」を作っていくこと、だと思いますが、ユーフォリア期間とは、その「文化」がよく見える貴重な期間なのです。

最初の100日間、感じる「違和感」をどんなことでもメモしてみましょう。それは、未来のあなたへの重要な「申し送り」となります。​

この時期のあなたからの申し送りが、その後の組織作りのヒントを教えてくれるはずです。

また、このメモに取り組むことで、「むやみに前任者を否定しないで済む」というメリットもあります。​やる気の高い駐在員の方ほど、「変えていきたい」という思いが強く、ユーフォリア期に無意識にも前任者のやってきたことを否定しすぎることが多くあります。

それがすべて悪いわけではありません。リーダーが代わることは、組織が変わる好機でもありますから、変化を起こしていって当然です。しかし、何を変えて、「何を変えないのか」を慎重に見ていく必要があります。​従業員にとっては、前任者もまぎれもないリーダーであり、その方針を信じて取り組んできたことが数多くあるわけです。
 

前任者の否定は、これまでにスタッフが尽力してきたことへの否定にもつながりかねません。「変えないこと」も意識的に示していくことで、スタッフは安心して変えていくことを受け入れるでしょう。

その際に、「違和感はいったん、メモをする」というプロセスを踏むことで、何を変え、何を残すのか、を検討するための、一定の「間」を設けながら選択していくことができるでしょう。​

これも、ユーフォリア期だからこそ取り組みたいことの理由のひとつです。

ユーフォリア期

Euphoria

カルチャーショック期 / 回復期  赴任後1ヶ月~6ヶ月ほど

- あなたも、気づかぬうちに…

数年前、私が拠点長として香港に赴任して、早々のことでした。

現地の香港人メンバーと、少しでも早く信頼関係を築きたい。 彼らのことをもっと知りたい。そんな私は、しばらくしてから、彼らを夕飯に誘うことにしました。

 

「Shall we have a quick dinner today? (今日の夜、飲みに行かない?)」

「…Maybe next time(…今度ね)」

 

きっと今日は都合が悪かったんだろう、そう考えた私は、また数週間後、メンバーと一緒に外出した夕方に、もう一度誘ってみました。

「Do you have time to drink a cup of tea? (ちょっとお茶していかない?)」

「Ah…Maybe next time(…今度ね)」

同じようなやりとりが、他のスタッフとも続き、不安を覚えるようになっていきました。「果たして、何かマズイことでもしてしまっただろうか」と眠れぬ夜を過ごすようになったのでした。

 

『異文化理解力』の著者、エリン・メイヤー氏は、ビジネスシーンにおける異文化理解に特化し、コミュニケーションギャップが生じやすい「8つのマネジメント領域(あるいは、分野)」に沿って国別の特徴を捉え、理解し、対応していくための示唆を与えてくれます。

Eight management areas

この視点で今回のケースを振り返ってみましょう。

私が無意識に選択していた「部下をお酒に誘う」という行動は、平たく言えば、日本流の「飲みニケーション」です。 スタッフから「関係」をベースにした信頼を勝ち取ろうとしたものだったと言えます。

もうひとつ、4の「リード」の領域では、「あなたにとって良い上司とは何か?」という問いによって、文化による違いが見えてくるものです。

 

たとえば「階層主義」を重んじる文化圏では、上位者が明確な方針を発信し、何事も上位者の同意や判断を得ることが、組織運営上重要であり、お互いに対する敬意だと捉える傾向があります。(日本や韓国、インドなど)

いっぽうで「平等主義」の文化圏では、ポジションの上下に関係なく、皆がフラットな立場で意見を出し合い、役割を全うする傾向があります。時には、ポジションを飛び越えて、課題解決に取り組むこともあります。(デンマーク、オランダ、スウェーデンなど)

この領域における私の「飲みニケーション」を振り返ると、「階層主義」の前提からくる、「上司の誘いは、断らないだろう」という、思い込みの上に立った誘い方だったのだと思います。自分でも気づかぬうちに、「日本的な文化」にのっとってことを進めようとし、うまくいかない理由が分からず、心理的ショックが起きてしまっていたのです。

この「気づかぬうちに」という点こそ、文化による違いがやっかいなものである所以です。

しばらくして、香港駐在の長い方が、こう教えてくださいました。

「香港人は、たとえ上司の誘いであっても、当日の誘いだと飲みに行かないことが多いよ。会社の飲み会は業務の一環と捉えるようだし。そもそも、ご飯のときには、お酒を飲まないしね」

世界では、文化的特長が日本と近しいとされる香港ですが、それでも、「私」と「彼ら」の前提には、やはり、違いがあったのです。

このように自分が持っている気づかぬ前提を知ることで初めて、相手との「違い」を認識することができます。多くの見えない「違い」が存在する環境に飛び込む私たちは、まずは自分自身をよく理解し、自分が持っている気づかぬ前提をも理解しておく必要があるのです。

グローバルリーダーにとって、「自己認識」を高めることは、多くの「違い」に向き合うためにも必要な準備です。そうして他者との「違い」に向き合い、自分の特徴を知り、求められている能力とのギャップに向き合ったとき、私たちの中に「変化へのコミットメント」が生まれてくるのではないでしょうか。

カルチャーショック/回復期

Culture Shock

適応期  赴任後6カ月ほど~

- 会話ではない、「対話」を作る

 

ある小売業のブランドマネージャーを務める方がコーチを受けていました。駐在してから1年間、なかなか部下との信頼関係が築けない状態が続き、チームはそれぞれが孤軍奮闘している状態が続いていました。

彼の部下の声を拾うため、コーチングの中で、匿名のアンケートを実施することにしました。はじめて実施したときは、多くの部下が「N/A」(回答できない、無回答などの意味)とだけ記載していました。建設的な意見どころか、不満さえも伝えてもらえない状態だったのです。

それでも、彼は一人ひとりと時間をとって、「仕事について、話そう」と対話を持つことをあきらめず続けられました。すると3ヵ月後にもう一度実施したアンケートには、こんな回答が出てきました。

「あなたは私の話を聞いているようで、自分の言いたいことを言っているだけです」

初めて、意見が書かれるようになりました。「不満がある」ということは、「期待がある」ということの裏返しです。部下から、不満がでてきたということ、これは、このマネージャーにとっては大きな前進でした。半年後、その期間の取り組みを振り返って、彼はこんなことをおっしゃいました。

 

「ずっと、認めたくなかったことがあるんです。自分は、ずっと日本本社のやり方、にこだわっていました。そして、そのやり方は、現地のスタッフには受け入れられていなかった。現地のビジネス慣習には合っていなかったからです。そのことには、実は内心気づいていたのですが、認めたくなかったんです。お恥ずかしい話、それを認めてしまったら、自分の立場はどうなってしまうのだろう、とぼんやりとした不安をもっていたんです。今は、そのやり方ではうまくいかない、と認められるようになりました」

 

「『今までのやり方では、うまくいかないのだ』という前提に立ってみると、彼女たちの言っていることが、よく聞こえるようになったのです。今までも、彼女たちは意見を言ってくれていたし、私も聞いているつもりだったけど、今までは、聞きながらも、ずっと自分の中にある『正しい答え』と照らし合わせて、彼女たちの間違いを修正しようとしていたのだと思います」

 

おそらく、コーチングを開始した頃の彼は、周囲と「コミュニケーション」をとってはいましたが、「対話」ではなかったのでしょう。そこにお互いの違いを認め、すりあわせていく

「再解釈」は存在していなかったのです。そして、それは彼の中にあった「漠然とした不安」が障害となっていたのでした。

「グローバルリーダーになる」プロセスとは、自分の「当たり前」を否定されることの連続であり、自分自身の世界観を変えていく「トランジション」のプロセスです。

 

「自分との対話」を通じて、現状を捉えなおす再解釈をし、「周囲との対話」でお互いの違いを表面化させ、すり合わせる過程でまた再解釈を生み出すことによって、「トランジション」は大きく前進していきます。

適応期

Adaptation

逆カルチャーショック期  帰任後すぐ~12ヶ月ほど

- 果たして、同じ場所に「戻って」きたのだろうか?

海外でチャレンジングな経験をし、さまざまな学びを得て帰任すると、3つの理由から、強い逆カルチャーショックを体験する傾向があります。

  1.  知らぬまに変化した自分自身のアイデンティティ

  2. 元いた組織の人的ネットワークやルールなどの変化

  3. 帰任後に対してポジティブな期待を抱きやすい

皮肉なことに、本人が赴任先にうまく適応していた度合いが高ければ高いほど、このショックは大きく、長引く傾向にあります。

ところが当人は、「元に戻る」という考えから、以前の自分の記憶を頼りに、「このように上手くいくはずだ」と楽観的な物語を予想していることが多いのです。

実際は、自分も周囲も変わってしまっています。予想は見事に裏切られていきます。その結果、周囲との関係が以前より希薄に感じられたり、以前取り組んでいた仕事が色あせて見えたりする、といった印象を多くの帰任者から聞かれます。中には、「同じ会社に戻ったはずなのに、まったく違う会社に来てしまったようだ」と語る人もいます。

自分の予想や期待が次々に外れていく過程で、多くの帰任者は、
だんだんと所属している組織や仕事内容に対して、「こんなはずではない」と批判的な意味づけをし始めます。

予期せぬカルチャーショックに対する自然な防衛反応として、現状を批判せずにはいられないとも言えるでしょう。

 

「ここでは、自分は必要とされていないのではないか」
「自分は競争から取り残されてしまったのではないか」
「自分の経験をもっと活かせる場所が他にあるのではないか」

この予期せぬカルチャーショックは、帰任者にとっての、大きな落とし穴であると言えます。

駐在員は「帰任」するわけですが、実際には私たちは、元の時間や場所に「戻る」ということはないのです。
あるグローバル人事の方は、こんな風に表現していました。

「キャリアというのは、『川の流れ』のようなものなのだと思います。川は、常に流れているので、たとえ同じ川の同じ場所に飛び込んだとしても、タイミングがちがえば、そこは違う川です。
まったく同じところに戻る、ということは決してない。一見同じように見えたとしても、そこはすでに全く違う場所なのです。

私たちは、たとえ帰任時に駐在前と同じような条件がそろっていたとしても、
まったく新しい職場に来たのだ、という考えで臨むべきなのです。

逆カルチャーショック期

Reverse Culture Shock

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新しい土地で、新しいキャリアに挑むトランジションに成功するためには、“自己との対話”と“他者との対話”の2つが鍵を握ります。


本書ではトランジションのプロセスについて、実際のケースを織り交ぜながら、乗り越え方を解説しています。

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